ニュース News

中国移動が TD-LTE の 3 年計画を発表、インフラ整備に 2000 億元

3G が中国に導入されてから 3 年が経過したが、中国移動は TD-SCDMA を採用したことで、3G 事業における競争力を次第に失いつつある。こうした不利な状況を一変させるべく、同社は TD-LTE の 3 年計画を発表し、他の通信キャリアを突き放すための戦略を明らかにした。

スペインのバルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012」において、TDD 推進団体である Global TD-LTE Initiative(GTI)が GTI サミットを開催し、そのなかで中国移動は正式に TD-LTE の 3 年建設計画を明らかにした。同社の計画によると、2014 年までに全世界で 50 万基の TD-LTE 基地局を設置し、20 億人をカバーするネットワークを構築するという。

同時に、中国移動は初めて中国における TD-LTE 発展計画を発表した。中国移動総裁の李躍氏は、「2012 年は試行規模をさらに拡大し、2013 年には新規基地局の設置と従来基地局のアップグレードによって TD-LTE 基地局を 20 万基の増やす計画である。また、2012 年内には香港地区における TD-LTE 商用化事業を開始する予定である」と述べた。

3 年計画の発表は、TD-LTE の全世界での商用化準備を整備し、TD-LTE キャリアが基地局を設置すると同時に、業界に TD-LTE 商用化の推進者とする中国移動の TD-LTE を建設する決意を伝えた。少なく見積もっても基地局 1 か所当たりの設置コストは 100 万元程度となるため、中国移動は 20 万基の TD-LTE 基地局を整備のために 2000 億元規模の資金を投入することになる。これにより、産業界の発展を牽引することが期待されている。

2013 年までに 20 万基の基地局を増強

GTI サミットにて李躍氏は、「中国移動は中国での TD-LTE のインフラ整備を加速する。2012 年に TD-LTE 大規模な試験ネットワークの構築を開始し、10 つの試行都市で TD-LTE の基地局を 2 万基設置する。北京、天津、上海、南京、杭州、広州、深圳、アモイ、青島などの都市で 2 万基ほどの TD-LTE 基地局を設置し、浙江省と広東省では、TD-SCDMA の F 帯を TD-LTE にアップグレードさせる方式で都市部でのカバーを強化する。杭州、深圳などの都市では、TD-LTE 業務の商用化テストを行う。さらに、今年の大規模なパイロット事業に加え、2013 年には新規基地局と従来の基地局をアップグレードすることで TDL-LTE 基地局を 20 万基まで増やす。準備さえ整えば、TD-LTE へのアップグレード作業は 2012 年下半期に前倒しする可能性もある」と述べた。

なお、中国移動は香港における 15 × 2 の 2.6 GHz FDD および 30 MHz 2.3 G TDD の周波数帯を獲得しており、2012 年末までに同地域での LTE TDD / FDD 商用化を開始する予定である。

現在、中国移動が設置している既存の TD-SCDMA 基地局数は 21 万基であるため、新たに 20 万基の TD-LTE 基地局を設置することは、TD-SCDMA の過去 3 年分と同等の規模である。このことは、全世界の通信キャリアや産業チェーンにとっても歓迎すべきことである。エリクソン中国で東北アジア地域総裁を務める馬志鴻氏は、「エリクソンは長い間、中国における TD-LTE のインフラ整備を待ち望んでいた」とコメントした。

ネットワーク構築にはクリアすべき課題も

いち早く TD-LTE のネットワークを構築して商用化を開始することは、中国移動にとっては意義の大きな戦略といえる。しかし、関係者によると、2013 年までに 20 万基の基地局を設置するためには、いくつかの克服すべき課題があるという。そのひとつに挙げられるのが、ネットワーク機器の選定と機器メーカーの供給能力である。2012 年に入ってから 2G / 3G ネットワークと LTE の音声切り替え試験が行われているが、実際に商用化に至るまでには少なくとも 1 年以上の期間を要するとみられる。商用化のプロセスを加速するため、TD-LTE の初期段階ではデータ通信のみにしか対応させない可能性もある。

また、新たにネットワークを構築するためには、遅くとも工事が始まる 1 年半前には全体の計画や地方レベルでの計画を策定し、ネットワークの性能や品質、使用する機器などについて具体的に準備を進める必要がある。しかし、中国移動は LTE ネットワーク計画の詳細については明らかにしておらず、機器メーカーにとっては大きな試練となっている。

さらに、TD-LTE が将来的に、どの周波数帯を割り当てられるのかについても議論の真最中である。工業と信息化部は、2570 MHz ~ 2620 MHz 帯を TD-LTE の周波数帯にすることを決定しているが、これは TD-LTE の周波数帯のすべてではない。今後も段階的に TD-LTE 周波数の割り当てが行われるとみられるが、これに対して専門家からは心配の声が聞かれる。そのひとつが、周波数帯が足りないため、将来的に TD-LTE の周波数帯が不足する可能性がある点である。次に、割り振られた TD-LTE 周波数帯の周波数が高いため、通信のカバーエリア領域が狭くなる問題である。より広範囲のネットワーク構築を実現するためには、周波数が低く、より波長の長い周波数帯を確保することが求められる。TD-LTE 発展のためには、こうした周波数の問題をいち早く解決する必要がある。

加えて、いつ中国政府が 4G のライセンスを発給するかについても見通しが立っていない。ある機器メーカーの関係者は、「今後の周波数の割り当てについて先が見えず、確かな商機が見えてこない今の状況では、海外の携帯電話メーカーの多くは先行投資を控えることになるだろう」と指摘している。

全世界で 4G 標準の融合をアピール

中国以外の国では、すでに多くの海外通信キャリアが TD-LTE ネットワークの商用化を開始している。TD-LTE に関して、中国移動は中国だけでなく、国際市場での商用化を実現して産業チェーンの成長を推進しようとしている。

先の GTI サミットでは、インドのバーティ・エアテル(Bharti Airtel)、日本のソフトバンクモバイル、米国の Clearwire、スウェーデンの Hi3G なども相次いで TD-LTE 計画を発表した。2012 年 2 月末までに、日本のソフトバンク、中東の Mobil などはすでに複数の TD-LTE 商用化ネットワークを構築している。

GTI サミットでは、通信キャリアは GTI 行動宣言を発表し、2014 年までに TD-LTE の基地局を全世界で 50 万基設置し、端末製品は 100 機種、カバー人口で 20 億人を達成するという目標を確認した。李躍氏は、「中国移動は、産業界をリードして TD-LTE と FDD LTE の融合を実現し、LTE ネットワークを世界中でローミング可能な一番理想的なネットワークにする。LTE を成功させるためには、全世界でのローミングを実現すると共に、各国が協力して LTE 周波数帯の統一化を図る必要がある」と述べている。

TD-LTE の発展計画が道半ばであることを考えると、今回、中国移動が 3 年計画を発表したことは、不利な局面をいち早く打開して競合他社に競り勝つための決意表明ともいえる。ただし、TD-LTE の商用化に向けては、割り当て周波数、端末機器、マルチアンテナ技術など、いくつかのクリアすべき課題も抱えている。

(出典:中国通信産業報)